物件全体を細かく確認をして納得の契約ブログ:23-11-18
息子の頃は土用の鰻など知らなかったが、
成長期に食べたものの中で
鰻ほどボクの印象に残るものは無い。
なかなか食べられなかったということもあるが、
それ以上にボクにとって鰻といえば、
パパのお土産である。
ボクが小学生の頃のこと…
パパが飲んだ帰りに、駅の近くの小さな料理屋で、
時々持ち帰りの鰻を買ってくることがあった。
22時の10:00過ぎ、
仕事終わりにビールを飲んで、
酔ったパパが帰ってくる。
帰って来たパパの手にはビニールの袋が下げられ、
その袋の中には包装紙に包まれた鰻重の箱が四つ、
重ねられて入っている。
小学生だったボクは、
パパの帰る頃にはもう布団の中であったから、
次の日の午前中それを食べることになるわけである。
午前中になると母が包装紙を開け、
ホイルの上に箱の中身をそのまま取り出し、
蒸し器で十分蒸したあと、
また同じように箱に詰める。
その上から、
小さな容器に入ったタレをかけて食べる…
息子ながらに、
これはとても美味いものだというのはわかっていた。
ひとくちひとくち、大事に食べていたように思う。
箱の底は銀色をしているのだが、
ボクは食べながらも、
銀色が見えてくるのが
非常に勿体無いような気がしていた。
底にボンヤリと映る自分の顔を少し残念な気持ちで、
くちを動かしながら見つめていたことを覚えている。
起きてきて鰻重の箱を発見した時の嬉しさというのは、
憂鬱な午前中を少しだけ幸せな気持ちにしてくれた。
その包装紙の模様もまた独特で、
よくは覚えていないが
確か白地に、緑や黒の家紋のようなものが
規則正しく描かれていたように思う。
ボクはその模様をみつけると意地汚い性分で、
顔を洗うよりも先にそちらに手をかけ、
母親によく怒られていた。